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第251話

弥生が眉を寄せた。

「何で奈々が持ってるものまで奪おうとするの?二人の関係は何も確定していないのに。それなのに、私は瑛介のことを諦められなくて、偽装結婚までしたんだから」

「だって、瑛介と奈々の間には何も進展がなかったからじゃない」

そう思うと、弥生は冷笑を浮かべた。「瑛介が奈々のものだって、瑛介自身が言ったの?」

「弥生、強がるのもいい加減にしなさい。瑛介が本当に奈々のものかどうか、すぐにわかるわ」

瀬玲はそう言うと、幸太郎の手を払いのけ、弥生の前にしゃがみ込んだ。

「携帯電話は持ってるでしょう?」

瀬玲が近づくと、弥生は警戒の眼差しを向けた。

「そんなに見つめられても困るわよ、ただテストをするだけだもの」

瀬玲はそう言って、弥生の体を反転させ、ポケットを探し始めた。最初は自分の腹を心配し、何をしようとしているのかわからない弥生は、恐怖に駆られて抵抗した。

「動かないで!」

次の瞬間、瀬玲は低い声で警告した。「もしまた暴れたら、何か起こるかもしれないわよ」

その言葉に、弥生の顔色が変わった。「何をするつもり?」

「ただ携帯を使って面白いテストをするだけ。あんたのお腹の子がどれほど大切なのか、それが心配なのかしら?」

彼女の声は低く、幸太郎には聞こえないようにしていた。そして、得意げに続けた。「奈々から聞いたけど、あんたはその子を守りたいんだって?どうしたの、宮崎夫人の地位を永遠に保つための手段だと思ってるのかしら?畜生ね。」

「畜生」という言葉に、弥生の目が鋭くなった。自制心が働かず、近くにいた瀬玲の頭に思いっきりぶつけた。

「あっ!」

瀬玲は衝撃で地面に倒れ込み、悲鳴を上げた。

「そんなこと言わないでよ!」弥生は歯を食いしばり、瀬玲を恨みがましく見つめた。先ほどまで穏やかな顔つきだった彼女は、今や怒りに満ちて、目は鋭く、まるで誰かと戦おうとするかのように見えた。

その変わりように、瀬玲は恐れを覚えた。

額を打った衝撃は、立ち上がるときまで耳に響いていた。怒りが込み上げ、復讐したいと思ったが、弥生の目を見た途端、足が竦んで動けなくなった。

幸太郎が走り寄り、彼女の腕を掴んで引き起こした。「また何をするつもりだ?」

瀬玲は我に返り、弥生に手を出すことはやめて、幸太郎に言った。「彼女の携帯はどこにあるの?外出するとき、絶
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